バカンス
- 作者: 松田忠徳
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/05
- メディア: 単行本
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そんな中、なんとか数回行けそうなのが「箱根」「熱海」。家康が開いたに等しい「熱海」と後続の「箱根」それぞれ江戸時代の半ばに最盛期を迎えます。行き4日、帰り4日、逗留は二七日(7日が2回)〜三七日つまり14〜21日。合計1ヶ月のバカンスになりますな。湯治と称して仕事を休み、1ヶ月の別天地。大店の主は、こうでなくっちゃね。
さて、江戸の温泉学、江戸時代の4大温泉、西の「有馬」「城崎」東の「熱海」「箱根」について詳しく語ってます。それに、将軍様に「汲み湯」を毎日運んだという話。熱海や箱根から「即日便」で温泉の湯を届けています。すんごいですね。ついでに江戸っこたちにも「温泉」入り銭湯がはやったり。
江戸後期には、温泉に行くと言って、その温泉場に開けた歓楽街の方がお目当てだったりしたそうで。すでに、日常から開放される「リゾート」の概念が生じています。そして、長期療養施設としての機能もあり、本格的な病院としては、都市よりも「熱海」や「城崎」(京都大阪から遠いけど、治療に結構の人が行ったらしい)の方が施設が整っていたとのこと。
筆者が嘆いているのは、江戸時代に温泉をメインとした世界に類の無い治療法が確立されていたものを、西洋医学の導入でほとんど形無きまでにしてしまったこと。温泉につかると、「なぜか」直ってしまう病気は、何故の部分がまだ蔑ろにされているらしい。温泉科学は、江戸の末期に「宇田川榕菴」が提唱し実践したものから停滞・衰退しているという。(この人すごい。化学という点では、当時の世界水準若しくはトップクラス。全然有名じゃないけど)
温泉、も江戸のキーワードの一つですね。二週間の湯治ってやってみたいなぁ。(行き帰りを省いても無理だけど)