第二話

昨夜の酒で頭がボーっとしていて、俺はよく聞いていなかった。
「・・・・社始まって・・・・プロジェクト・・・」部長がしゃべっているらしい。
「この第一開発課からプロジェクトリーダーを出せたことは、私も誇りに思う。水野君。・・水野!」えっ。俺が呼ばれてる。何の話だったんだろう。
サンダルから靴に履き替えて、周りの顔色を窺いながら、課長の隣に、きちんと足を揃えて立った。お義理にも立派とはいえない課長が、俺を気の毒そうに見ている気がする。何か、濃い霧の中にいるような、悪い予感がした。
部長は、顔を赤らめながら演説を続けている。
「この、復興プロジェクトは、我が社の社運をかけたものである。是が非にも、成功させてもらいたい。水野君なら、期待にこたえてくれると信じている。がんばってくれたまえ。」と俺の肩を、部長が叩く。課長が、目配せをしている。
「はっ、はい。若輩者ですが、精一杯やらせていただきます。」と、訳もわからず俺はしゃべっていた。部長は、満足そうに去っていった。
俺が課長に聞こうとすると、あっという間にフロアの全員に取り囲まれてしまった。
「水野さんすごいですね。成功したらきっと次長でしょ。」おい、何の話なんだ。
「きっと、行くんですよね、遠そう。お金はやっぱりドルなのかなぁ。」どこの話をしてるんだ。
「宗教とか戒律とか風紀に厳しそうですよね。水野さんうそつきだから、すぐに偽証罪でギロチンかも。」おい。
俺は、周りを制し、課長に向かって言った。
「何のプロジェクトなんです?なぜ私がリーダーなんです?」
課長は、俺が聞いていなかったのを見透かすように言った。
「部長の話どおり、復興支援プロジェクトの第一弾だ。国連からの依頼だ、失敗できん。現地は遠いし、仕事ができて身軽なものが適任だ。このフロアでは、独り身の係長は君だけだからな。」
俺は、恐る恐る尋ねた。
「どこなんです。復興って。」
「地球だ。」