かきつばた杯に応募しました。人力検索

人力検索 かきつばた杯(http://q.hatena.ne.jp/1328182305)に応募しました。今回は、ふざけてます。

小説になっていないんですが、短編のかけらを投げ込んでみました。

 

『お題について考えるに』

「お題が困難に満ち溢れていて、限定されているかきつばたは、私には初めてだ。」
「おや、いつになく言葉がめんどくさいですねぇ、水野さん。」
「そうなのだよ、望月君。こんなお題の表現はかつてあっただろうか、いやない。」
「どれどれ、”『探偵』で『ファンタジー』な文章”ですね。普通ですよ。」
「いやいや、A楠氏が予告している様に、これは難解と言えよう。」
「なんだか、水野さんらしくないなあ、その言い方」
「言葉の厳密な運用を考えていたら、こうなってしまったのだ。」
「で?」
大江健三郎の文章から切り出してきてしまった様な、まったくもって普通では使わない、それでいて心のどこかを刺激している、そんな奇妙なお題を出していることが、私には非常に気になるのだ。」
「うわ、何言ってるのかさっぱりわからない。大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫、森のようにどっしりと大丈夫だ。」
「大丈夫じゃない気がする…」
「『探偵』と『ファンタジー』ではないのだよ、望月君。単に『探偵』が『ファンタジー』の世界に登場するとか」
「それって、こういうのでしょうかね」
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 俺は、探偵だ。
 「犯人は、お前だ!」みんなを前にして、俺はビシッと、ハリーを指差した。
「お前は、おとといの晩、寮からドラゴンに乗って湖に行ったのだ。そこで、禁断の魔法を使い、湖の主である大ウナギを殺したんだ。」
ハリーはにやりと笑い、こう言った。
「どこにそんな証拠がある?ボクが禁断の魔法なんて使えないのは、みんな知ってる。」ハリーは折れた魔法の杖を、俺の目の前にぶら下げた。
「この杖で、どうやってあの呪文を唱えるんだ?そんなことをしたら、杖が吹っ飛んで、ボクもこの世にいなくなってしまう。なあ、そうだろう?」
周りの生徒が、うなずく。俺は、ハリーに向かって言う。
「その杖が、先週の金曜日に、皆の前で折れた杖だよな。だから、禁断の魔法はつかえないって。でもな、」
俺は自分の杖をハリーの杖に向けて叫んだ。
「ケバア、ヨエツ!」
ハリーの杖は、俺の手元に飛んできた。
「ハリー、お前の杖なのに、なぜ俺が魔法で取れるんだ?」ハリーの顔に、苦笑いが浮かぶ。
「杖は、魔法では奪えないはずだ。」
「そうだ、持ち主が本物ならな。」
ハリーはわからないくらいに小さく眉を上げると、たちまち、黒い羽根の生えた異形の物になった。羽根をはばたかせて、その物は窓から、アッという間に空に消えていく。
「ハリーの本物は、屋上のタイルにはめ込んである。その杖で叩くんだな。」
空が一瞬真っ黒になり、すぐに晴れ渡った。
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「こんな感じで。」
「つまりは、探偵がファンタジーの世界にいるわけであろう。」
「だって、そうでしょ」
「そうではないのだ。探偵でファンタジーなのだ。これに関しては、”何”が”探偵でファンタジー”なのか、皆目見当がつかぬ。」
「また、語り口が…」
「でというのは、~であり、なおかつ~である、と言い換えることができるとしよう。」
「ふむふむ」
「探偵であり、なおかつファンタジーである物とはなんであろうか。若しくは、探偵であるのにファンタジーでもある物ということになる。そのような物は、この世に存在するのであろうか。」
「そうなの?」
「何か別の意見があると申すのか?」
「何だかなぁ。お題が「探偵」”で”「ファンタジー」な文章でいいんじゃないの?」
「もっともである。それは、こんな文章であろうか。」
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俺は、探偵だ。
だが、もうやめようと思う。
剣と魔法の世界では、探偵には仕事がない。
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「これのどこが、ファンタジーな文章なの?」
「頭が沸騰するほど考えて、とことん突き詰めると、恐ろしいほど短いが、このようになるのではないだろうか。」
「今日は疲れる。でも」
「でも?」
「ファンタジーな、という部分はどう考えるのさ」
「”剣と魔法が登場すれば、ファンタジーである。”という定義があるようだが、どうであろう。」
「安易だなぁ」
「では、これではいかがかな。」
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俺は、探偵だ。
腕がいいと評判だ。今日ももうすぐ客が来ることになっている。
俺は、机の引き出しに調査結果の封筒を入れ、客を待った。
トントン
「はじめまして、こちら魔那探偵社でいらっしゃいますか?」
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。」
俺には調査内容が旦那の素行調査なのも、旦那が浮気していることもすでにわかっている。
だが、話を聞くことにしよう。依頼人が美人だしな。

俺は、剣と魔法の世界からやって来た。杖を振れば、この世界では探偵なんて簡単だ。
 
 
 
ん?
そうさ、
逃げてきたのさ。消えゆく世界から。
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