ただの役者じゃねぇな

南の島に雪が降る (知恵の森文庫)

南の島に雪が降る (知恵の森文庫)

加藤大介さんの、記録文学中島梓の、「ガン病棟ピーターラビット」に出てきたので、読んでみた。
たかが役者の戦記物、大したことないさ。とおもいきや。
しみます。涙しました。
読みやすい文章。優しい表現。淡々と語る冷静さ。
見事な文学作品なのである。中島梓が感涙したのも頷けます。
ニューギニアの戦地で、戦闘もせずに演劇をしていた、という話なのだ。何を戦争中に遊んでいるのかと。
しかし、この演劇が、取り残された兵士達の生きる糧になる。月に一度の観劇を唯一の希望に、厳しい農作業をし、空襲から避難する。

命がけで観劇し、それに応える演技をする。そんな空間は、役者として、ある種の天国だったのかも知れない。

役者やスタッフが集まってくる過程は、どこかで観たような…。あ、荒野の七人、じゃあなくて、七人の侍
あ。加藤大介さん、出てたよね。

戦闘シーンはないけれど、戦争の無意味さ、虚しさは、ひしひしと伝わってくる。
 
落下傘の雪、見てみたいなぁ。