目的と動機

俳優になりたいあなたへ (ちくまプリマー新書)

俳優になりたいあなたへ (ちくまプリマー新書)

俳優になるには、どうすればいいの?
 
俳優になって何をしたいのか、何のために俳優になるのか。
考えてから言ってますか?
 
鴻上はこう問いかける。
もてたいでも、有名になりたいでもいろいろ「個人的な」理由があるだろう。
理由に卑賤はない。俳優になりたいのだから。
でも、理由によって、俳優としての選択肢が違ってくる。
TV、映画、ラジオ、DVD、演劇
どの俳優になりたいの?
タレントではない、「俳優」に求められているものはなんだろうか。
そして、演出家として、俳優に求めているものは何か。
 
そんなことを、一幕もの暗転なしの脚本形式で語っている。

鴻上は、俳優の仕事を、
「作者の言葉を観客や視聴者に伝えること。」
と定義している。でも、台本を元に演出家と俳優が作っていくとも言う。
とすれば、この作者というのは、「原」作者だけではなくて、演出も俳優もスタッフもそして観客も巻き込んだ、集団としての作者なのかもしれない。
そんなことを、読みながら思っていた。これは、俳優だけではないと思う。音楽も曲と演奏は違うし、絵画も展示によってまた異なる印象になる。
 
演技の実践で、動機と目的を区別する、という。動機は、熊が現れたから逃げなくては、である。それに対して目的は、車の扉を開けて飛び込もう、である。この具体性が、演技であり演出である。
更には、カギが開かないなどの葛藤があると、ドキドキが増えて、面白くなっていく。
俳優の話なのか、演出の話なのかよくわからないが、物語を作るには、参考になった。
 
演出家としての、最近の悩みが垣間見える。「ぶさいく村」出身者が少なくなりすぎている、ということらしい。「私ってブスだから・・・」と言わせたい少女タレントが可愛いのは、確かに使いにくい。
 
俳優になるためのハウツー本ではないから、俳優になろうとしている人に「役に立つ」本ではないけれど、心構えくらいは補強してくれそうです。この本は。