『最後の突撃』

  

お題 : 鬼ごっこ 、 電飾

「前席!右前方に機影。」

「了解!いよいよ来たな。後席、最適航路を算出。左の谷から回り込む。」

「了解、航路算出。HUDに表示した。残弾確認、燃料確認。」

「後席!わかってる。最後の一撃になりそうだ。いくぞ!」

私は、操縦棹を握りなおした。機体を谷川すれすれに飛ばし、山頂を目指す。

「後席!飛び出すぞ。照準のタイミングを外すなよ。」

「前席。わかってる。人類最期の攻撃だな。精一杯やるよ。」

そうなのだ、私たち2人は人類の最後の2人。少なくとも、地球上で飛んでいる最後の軍用機のパイロットなのだ。

「前席!山頂まで、あと3秒」

「2・・・でるぞ」

・・衝撃・・・

「前席、おい大丈夫か。」

私は、後ろの席のハヤタに肩を揺すられて気がついた。

「ああ、なんとかな。どうなってる。」

左のモニタには、山頂を越えてから10秒と経っていない時計が刻まれている。

機体は順調に飛んでいるようだ。

「後席、標的は?」

ハヤタの右手が、私の肩越しに伸びてきて、真上を指差した。

見上げると、真っ黒な影が真上に浮かんでいる。まるでエイのような形だ。

「牽引ビームだな。ダン。もう、われわれにできることはないようだ。」

私は、うしろの席へ振り向きながら頷いた。

人類は、降伏せざるを得ないだろう。

「なあ、ハヤタ。あいつら何者なんだろう。」

「宇宙人なのかもわからないが、もっと判らないのは、やっていることと目的だ」

「そうだな、飛んでる飛行機を全て捕まえてるんだからな。おかげで、俺たちが最後の戦闘機になっちまった。」

「ついに、俺たちも捕まったか。鬼ごっこだったら、あいつらの勝ちってところだな。」

「どこに、連行されるんだ?これから。」

下には、アメリカ大陸の荒野が広がっているはずだが、夜で見えない。

「ダン、冗談のようだが、俺たちはあそこに連行されるみたいだ。」

と、ハヤタの手が左下を指した。そこには、夥しい数の航空機が止まっていた。そしてその真ん中に、奇妙な形の岩山が聳え立っていた

「デビルズタワーか。なんの冗談なんだ。」

 未知との遭遇そのままの岩山のすぐそばに、私の機体は下ろされた。戦闘モードのままのコンピュータが警告を発した。

「ハヤタ、信号を受信したぞ。」

「ああ、待ってくれ、解読結果を表示させる」

私は、目の前のディスプレイに

<ミンナ ツカマエタ>

とかかれるのを見た。

と、そのとき、電飾でいっぱいの巨大な敵の母船が上空に現れた。

その母船は、デビルズタワーの上に降下してきた。そして、その頂上に接触し、再び上昇して消えた。

「また入電」

<オニゴッコ カンリョウ >

「え。」

と私が言うまもなく、敵の母船が左の低空から現れ、高速でデビルズタワーに衝突した。

<ツギハ キミタチガ オニダ>

デビルズタワーはその衝撃で根元からはずれ、円柱状になって遥かかなたに飛んでいってしまった。

呆然としながら、私は後ろのハヤタ隊員が、八方に散らばっていく敵船隊に向かって突っ込む声を聞いていた。

「だからそれは、カンケリだって。オニゴッコじゃない。」

似たような話を読んだことがあるような、無いような。
まあ、いいでしょ。

これは、望月君ヴァージョン
http://q.hatena.ne.jp/1197452107
に参加した作品です。