クリスマス企画

http://q.hatena.ne.jp/1197452107
に参加しました。参加者Aには、見逃していてなれなかった。
気を取り直して、参加者Bとして参加します。

2本目、ジュブナイル

「サンタの服」       キーワード;鬼ごっこ + サンタ

 鬼ごっこなんか、しなけりゃよかった。お兄ちゃんがいけないんだ、あんなに早く追いかけてくるから。思わず、入っちゃいけないパパとママの部屋に飛び込んじゃったんだ。

 僕は、パパとママの部屋の中に座り込んでいた。僕の前にはクロゼットの扉が大きく開いていて、中には包みが2個と大きな紙袋が1個。お兄ちゃんは、「しまったなぁ。」って顔してる。目の前の包みは、赤と緑のクリスマスのリボンがかかっているし、紙袋からは「サンタさん」の服がはみ出している。

「サンタさんって、パパだったんだね。やっぱり。」

 お兄ちゃんはあわてて、「いや、これはいつものプレゼントだよ。服は、きっと今夜のパーティーで使うんだよ。」と言っている。

 でも、僕らへのパパたちからのプレゼントは、リビングのツリーの下にもう置いてある。クリスマスパーティーでサンタさんにパパがなったことはない。

「サンタさんは一人しかいないからね。パパにはなれないんだ。」っていつも言ってたから。

 泣きたくなってきた。サンタなんて、いなかったんだ。あれはみんなパパだったんだね。お兄ちゃんもいないって、知ってたんだ。僕だけ知らなかった。みんな隠してたんだ。

 夕方になって他のみんなはイブのパーティーの準備をしていた。でも、僕は怒っていたので、パパのベッドに寝ていた。今日は、お手伝いもしないんだ。

 ガサガサっていう音で、目が覚めた。すっかり夜になっていて、部屋が真っ暗。サンタさんが目の前に立っていた。

「パパなんでしょ。もういいよ。」

僕は怒って言った。すると、目の前のサンタさんは、

「ああ、そうじゃよ。」

と言った。僕は、あれ?って思った。パパは普段こんな話し方しない。

「パパ、ふざけないでよ。ボクは怒ってるんだからね。サンタさんなんていなかったんだよね。」

目の前のサンタさんは、普段のパパより少し太っている。

「わしは、パパじゃが、パパでもない。サンタなんじゃ。」

なんだか、ヘンなことを言っている。それに、声がおじいさんみたいだ。

「怒らないで聞いてくれるかの。君のパパは、サンタなんじゃ。いや、世界中のパパは、サンタなんじゃよ。」

カーテンがはためいて、月の光がサンタさんに当たった。小さなめがねをかけて、ひげが白い。あれ?パパ、めがねもひげもないぞ。

「考えてもごらん。全世界のよい子の数を。まあ、中にはよい子じゃない子もいるが、そんな子を引いても、すごい数じゃ。一人で一晩で回れるはずがなかろうが?だから、こうして、みんなのパパの体を借りてるのじゃ。」

「だって、みんなサンタなんていないって。」

サンタさんは、右手を挙げて、窓際に僕を呼んだ。

「ごらん、隣の家にも、サンタがいるのじゃ。」

窓越しに隣の家が見える。サンタさんのかっこをしたおじいさんが、子供部屋にプレゼントを隠すのが見える。あんなおじいさん、あの家にいたっけ?

「見ててごらん。」

 隣の家のサンタさんは、ベランダ沿いにリビングに戻っていく。段々若くなっていく。あ、隣のおじさんになった。

「わかったかの?どの家にも、パパの力を借りて、サンタはやってくるのじゃ。」

僕は、大きくうなづいた。サンタさんは右手の小指を立てて言った。

「ただ、約束してほしいんじゃ。パパたちは、このことを知らないんじゃ。パパは自分がサンタの代わりになっていると思ってるからの。だから、君も、このパパがこのサンタに変わっていたことを、言わないでいてほしいんじゃ。よいかな。」

僕は、サンタさんと指切りをした。

「では、また来年じゃな。寝たふりをしないと、パパに戻れんぞ。」

僕は、寝たふりをするためにベッドに戻った。サンタさんの輪郭が小さくなった。

 誰かに教えたいな。でも、黙ってなくちゃ。お兄ちゃんには言ってもいいかな。どうしようかな。

 うん、決めた。僕がパパになるまで、黙っていよう。そうしよう。僕は、なんだか、わくわくしてきた。

えー、あざとくも「クリスマス」&「ジュブナイル」という組み合わせです。
とりあえず、読んでもらえるかな。

※ 続編あり。次のエントリーをごらんあれ。