赤瀬川原平氏の視点

目玉の学校 (ちくまプリマー新書)

目玉の学校 (ちくまプリマー新書)

最近、筑摩プリマー新書をけっこう読んでる。
中学生くらいの少年向けに、一流執筆陣が書き下ろしで本を出しているのだ。
少年向けだから、文体がいつもと違っている人が多く、かえって読みにくかったりするが。
 
目玉の学校は、赤瀬川氏の自分史のような感じになっている。
少年時代には、「自分だけの視点」を持つようになって、初めて自己を世界から分離した話。
青年時代には、前衛芸術にはまり、普通ではない視点から芸術に取り組んだこと。
そして、前衛に飽きてしまったこと。
さらに、トマソン路上観察学会へと話は進んでいく。
 
視覚、錯視、見るもの、見せるもの、見えるもの、見えない物…
目玉の周辺を、なんとなく徘徊する、赤瀬川氏。
もちろん、趣味のカメラの話もでてくる。
 
芸術の王道とも、辺境ともいえる「前衛芸術」を通り、芸術を意図しない芸術「トマソン」へと
作者のスタンスは変わり、視点も視線の方向も変わる。
 
芸術と普通の境目に「不安定に存在するトマソン」。
それを発見したのも、赤瀬川氏の目玉の力なのだろう。