結末は読んでもわからない。読者に挑戦状。

どちらかが彼女を殺した (講談社文庫)

どちらかが彼女を殺した (講談社文庫)

犯人が誰だか、書いてない推理小説
とはいえ、題名通り「どちらか」なんだけど。
 
二人の容疑者が浮かんで、必ずどちらかが彼女を殺した、というところまでは、
加賀恭一郎氏が誘導してくれます。そして、犯人あては、あなた。
という構成。とりあえず、少しは頭を使わないと「気持ち悪い」感じになってます。
 
名探偵の掟で、読者にも責任があるって言ってた作者だけのことはあります。
が、やっぱり、最後の数ページまでは「作者に連れてってもらえちゃう」んですよ。
主人公と加賀刑事の「推理」を追いかけて、ストーリーは展開します。
この二人の披露する推理を、先回りして組み立ててる読者は、やっぱりいないでしょう。

しかも、最後の犯人あての部分。
推理というよりは、論理ですね。
数学的論理によって、答えがでてしまう。
答えが「明確にわかる」瞬間を味わえますが、反面「じわじわ推理」することにはなっていない。
 
まあ、読者にもっと筋道だった推理もしてね、という小説は、たぶん書けないですよね。
少なくとも、同じ本の中に答えが書いてあったら、大半の人は読んじゃう。
解説編を後で出版するとか、犯人あてと推理を懸賞にするとかしないと無理かな。
 
とりあえず、あっという間に読み終えてしまったのはたしか。
小説として、面白い。
何といっても、この部分がちゃんとしてないと、読めないですもの。