再録です。(去年の自分の回答から。)

昔住んでいた家の近くにあった、大きな墓地の話です。

大きな墓地で、太い道が中央を通っていました。

その道は、車がほとんど通らないので、自転車で皆よく通っていました。でも、さすがに夜になると怖いので通ってはいませんでした。

ある、月の無い晩のことでした。私の友人が、塾で遅くなってしまいました。どうしても見たいテレビがあったので、墓地を通り抜けることにしました。急いで通れば大丈夫だと、自分に言い聞かせたそうです。

墓地に入ってしばらくすると、遠くで軽い足音がします。小さな子供が走っている様な感じでした。友人はどきどきして、自転車のスピードを上げました。

すると、その足音もスピードをあげて、近づいてきます。それに、なにやら声が聞こえてきました。

「ねえ、あそぼうよ。」小さな女の子の声です。とてもさびしそうで、思わず自転車の速度が緩みそうになりました。女の子の声は、だんだん近づいてきます。「ねえ、どこ行くの?いっしょにあそぼう。」

結構早く自転車をこいでいるのに、女の子の声は、もう真後ろです。「そっちいかないで。そっちは、出口だよ。」女の子の声は泣きそうです。友人の耳元まで、声が迫ってきました。

墓地の出口が見えてきました。女の子の声は、耳元で聞こえます。「こっちでいっしょに遊ぼうよ」

出口がもうすぐなので、友人はスピードをさらに上げようと、足に力をこめました。そのとたん、足音が急に大きく強くなり、野太い声で

「行くなー」

という恐ろしい声がすると同時に、右耳と左脇の横から、太い腕が突き出されてきました。

その腕が友人を捕まえようとして曲がる前に、猛然と足に力を入れ自転車の速度を友人は上げました。

かろうじて、その手をかいくぐり、墓地の出口を抜けると、恐ろしい声は小さくなっていきました。どうやら墓地から出ることができないらしかったのです。振り返りもせず、友人は家に帰りました。

それ以来、私たちは昼間でも墓地を抜け道にすることをやめたのでした。

これは、先輩からの伝聞。ただ、詳細は覚えていないので、ほとんど創作。
夜語られると、怖いです。