「○○の秋」 かきつばた杯参加

「すみません」
目の前にマイクが付きつけられた。マイクを持っている美人が、さらにたたみかける。
「なんとかの秋と言えば?」
ちょっと傾けた笑顔はかわいいが、”答えろよこの野郎”という心の声が読み取れる。
「は、はあ。スポーツですかねぇ」
「スポーツですか」
俺の答えに不満そうな美人に、ちょっといたずら心が目覚める。
「読書はいつも中毒してるんで」
軽いウィンクをカメラ目線で投げながら、俺は言った。
「食欲の秋ですね。な・ん・で・も・食べちゃうって感じです」
「はい、食欲の秋です。いただきました」
夕方のニュースでよく見る美人は、満足そうにカメラに振り返る。
駆け寄ってきたスタッフとやり取りをしてから、俺は昼飯を食べにハンバーガーショップへ向かった。


満月の輝く下、駅へ向かう。
ここの駅前の飲食街は、遅くなると残飯やゴミがいっぱい出してある。
そのゴミ袋をねらうネコとカラスの抗争で、結構やかましいのだ。

いつもなら。

だが、今日は違う。
ネコの声がしない。
カラスも飛び交っていない。

でも、黒い何かが、あちこちで蠢いている。

なんだろう。ネコより大きい。

なにしてるんだろう。

ゴミだ。
ゴミをあさっている。

ヒトだ。
ヒトが、ゴミをあさり、手当たり次第に何かを食べている。


なんてことだ。
あれを放送したんだな。


「ナ・ン・デ・モ・タベチャウ」に、俺のメンタリストとしてのメッセージを乗せすぎたんだ。